- 「豚の報い」又吉栄喜
[amazon_link asins=’416761801X’ template=’ProductAd’ store=’jtcy-22′ marketplace=’JP’ link_id=’ec27f53e-a1c9-11e8-9f08-892ddc6ac47e’]芥川賞を読んだのは、多分「日蝕」以来だと思います。受賞年度はこっちが先だけど。
あの頃、又吉栄喜・目取真俊が立て続けに芥川賞を取り、当時の情勢と併せて「懐柔策」なんて言われたことがあります。目取真俊や大城立裕が沖縄戦や米軍施政下の苦悩、と言った少なからず政治的なテーマを取り上げていたのに対して、この作品はあくまでそういったところと無関係な、「単なる沖縄」を描いた、と言う意味で、二つの受賞は違う質のものじゃないかな、と思います。どっちかというと池上永一のようなドタバタが描かれているわけで。
で、内容ですが、この話には御嶽(うたき)やユタや御願(うがん)が出てきます。これはたとえば陰陽道をモチーフに話を作る、と言うのとは異なって、沖縄ではあくまで日常の延長上にある出来事としてこれらが描かれています。で、沖縄では(確かにちょっとユージュアルではないけど)普通の小説、として書かれていても、それを受け取る沖縄以外の読者はそれを「非日常」と受け取るわけです。そうすることによって、たとえば中島敦の南島小説のような、一種のファンタジーとしてこれが受け取られ、過剰な解釈が行なわれ、高い評価につながった、と言う面も受賞の背景にはあったのではないかな、と思います。
二作目「背中の夾竹桃」はベトナム戦争当時のコザを舞台にしたハーフとGIの関係を描く、と言うことで、先述のいかにも沖縄沖縄したテーマではありがちな話です。ただ、そこに出てくるDC通りや空港通りや中の町や北谷陸軍病院がなじみ深い地名であるので、私は楽しめました。