アイルランドの薔薇

  • 「アイルランドの薔薇」石持浅海

[amazon_link asins=’B00MVL71XK’ template=’ProductAd’ store=’jtcy-22′ marketplace=’JP’ link_id=’4ae6790c-a233-11e8-a549-0de7a23a80ec’]以前に「扉は閉ざされたまま」を読んだ石持浅海の長編デビュー作。

とあるアイルランド湖畔の安宿で起きた殺人事件。被害者は北アイルランド武装勢力の幹部で、「後日衆人環視の状態で死んでもらうため」武装勢力にとっては今死なれては絶対に困る人物だった。
イギリス政府と武装勢力との和平が成立しそうなこの時期に、真相が解明されないまま安易に警察の介入を招いては、和平交渉に重大な影響を与えてしまう。宿泊客の日本人科学者・フジは他の宿泊客や残された武装勢力と協力して、宿に残された人間たちのみで犯人を捜し出そうとする、という筋書きの推理小説です。宿泊客の中には、後日自然死に見せかけて被害者を殺害するはずだった殺し屋『ブッシュミルズ』も紛れており、読者にとっては「誰が『ブッシュミルズ』なのか」も謎の一つとなります。

前回読んだ(発表順ではずっと後になりますが)「扉は閉ざされたまま」では、殺人が起こった現場のドアが、事件解決まで開くことなくストーリーが進行するというアクロバティックな展開が用いられました。今回は「警察を呼ぶと北アイルランドの政治情勢に重大な影響が及ぶので呼ぶことができない」という理由からクローズド・サークルが発生します。このほか、他の作品でも変わった理由によるクローズド・サークルが多数あるとのこと。光文社で結構文庫化されているようなので、書店を当たってみることにします。

内容では、怪しげなところには不自然な記述があったりと、真相を当てようとして楽しむタイプの人にはヒントが多く転がっているように思えます。私は、「この書き方は何となく怪しい」と思っても、結局それが何か最後までわからないまんまのものばかりでした。一方、あまりに全ての登場人物が理知的過ぎやしないかというのはちょっと気になるのですが、ミステリーとしては特別なものではないようにも思います。おもしろい本でした。

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