数学ガール

  • 「数学ガール」結城浩
  • 「数学ガール/フィルマーの最終定理」結城浩
  • 「数学ガール/ゲーデルの不完全性定理」結城浩

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2週間前、那覇でジュンク堂に行ったときに見つけて、以前から気になっていたので購入したのが「数学ガール/ゲーデルの不完全性定理」でした。これはシリーズ3作目に当たるもので、恥ずかしながら 数学ガールシリーズが複数冊出ていることもこの時点では知りませんでした。3作目と言っても前作の知識を必要とするところは(ごくわずかしか)なく、全体につっかえることなく読み進めることができました。が、最後の不完全性定理の証明でダウン。いったん前作を読もうと、1作目、2作目も購入しました。

2作目の最後ではフェルマーの最終定理、3作目の最後にはゲーデルの不完全整理について解説をしていますし、1作目の最後も、有名ではないものの、相当の難問を解くことに腐心しています。ちなみにこんな問題。

1円玉、2円玉……n円玉という硬貨が存在するとして、n円を支払うための小銭の組み合わせは何通りあるか。

数学の教科書の一つの難点は、「それを学んでなんになるのか」を示すのが難しいところです。科目選択制かつ単元選択制の下では、以前の単元で学んだことを後の単元に複合させることをすべての生徒に強いることはできません。また、文系数学とされる多項式関数までの微分・積分が、どのような分野に生かされるのかを示すには、たとえば物理との融合が必要で、そのような示され方は、高校時代にはなかなかなされないものです。

本書では、前の方で出てきた数学的知識が、後方でしっかり生かされてきます。数列の一般項を求めることは母関数の考え方につながる、といった具合。最後には、その巻で学んだことを総動員して、大きな問題の解決につなげていきます。その張り巡らせ方は、まるでよくできた小説の伏線のようですが、物語そのものにも、大きな伏線が仕掛けられており、読者を驚かせる点でも緻密に構成されていると感じました。第1作の最後の問題、テトラちゃんが導いた解法は、それまでの彼女の行動を考えれば、いかにも自然なものでした。

それから、緻密に構成されていると言っても、ただ一本道に、スムースに進んでいくわけでもないところも、本書の魅力だと思います。たいていの問題集は、問題と、それに対するスマートな解法が掲載されていますが、どうやってそのスマートな解法にたどり着いたかは滅多に示してくれません。学ぶ側としては、それを一番に知りたいのに。そういった、解法を導くまでの懊悩がしっかりと描かれている点も、たとえば受験生には参考になるのではないでしょうか。問題を前にして、それを解くための試行錯誤を伺える文章というのは、これ以外だと月刊誌『大学の数学』の受験報告くらいしか思いつきません。

数学的知識が足りないと数式を理解できないところはいくつかあります。その場では解説せず、後に詳しい解説が出てくるものがいくつかありますので、高校生などが読む場合には、いったんは話の流れだけを追うようにして読み、後からもう一度読んでみるのがいいのかもしれません。または、本書中で解説されているように、わからない言葉に突き当たったら索引を引いて調べる、という読み方でもいいのかもしれません。

個人的にもっとも興味深かったところは、「フェルマーの最終定理」の299ページに出てくる「1986年の風景」。ここで出てきたのはとてもシンプルな風景でしたが、この風景と同様にして架空の定理をいくつか示し、そこから「ある予想を証明するには、あと何を証明したらよいか」という問題を出してみるのは、論理のテストとしておもしろいかも、と思いました。

大学受験で役に立つところ、といえば、今のカリキュラムではなかなか教えられないながら受験では大活躍する、整数論の知識などがあるところでしょうか。「法として合同」など、学校ではなかなか教えてくれない問題は、後々役に立つと思います。ちなみに、河合塾による2012年からの新学習指導要領解説によれば、新課程の数学Bでは整数論についての単元がもうけられるそうです。それから、(x-y)nの展開も、学校の中ではきっちりとは教えられなかった記憶があります。

私の高校時代、数学の先生は大変に意欲のある方で、夏休みの夏期講習の空き時間に、意欲ある人間を集めて、テイラー展開や、特殊相対性理論について解説する特別講義をしてくださいました。そのときの内容がどんなものだったかは、今やこれっぽっちも覚えていませんが、聞いているときにかなりの知的興奮があったことは、何となく覚えています。

指導要領を離れて、高校生以上くらいを対象に、数学についての話を書いていく本、というと、小針晛宏の「」を思い出します。これを勧めてくれたのも高校時代の別の先生で、大学時代にちょうど復刊したので、うれしくて購入したことを覚えています。これも軽妙な語り口ではありますが、いかんせん時代に依拠した書きぶりが多く、万人が違和感なく読めるようなものではありません。本書ならきっと、30年後でも若い読者がいるのではないだろうか、ということも期待しました。

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